『医心方』をご存知でしょうか?

  現存する日本最古の医学書

 

平安時代の宮中医官である鍼博士・丹波康頼有史以来9世紀末までの医学文献を集め編纂して、984年に朝廷に献上したもの。

筑摩書房『医心方』より

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480505439/

 

その医心方の中に、なんと、温石の記載があります!

*写真は、私物で購入した巻四 美容編。全訳詳解された槇先生よりサインをいただきました♬

 

温石という文字を医心方の中に見つけた時

2人に1人が悩んでいる<冷え>、温石でいいんだという確信が湧きました。

なにか ギフトGIFT のようなものをいただいた気がしたのを覚えています。

 

医心方 巻1_B 薬名考

(2)(『本草拾遺』より 二十五種)

  温石 今焼火熨人腰脚者

 温石 今、焼キテ人ノ腰脚ヲ火熨(かうつ)スル者

 温石1 現在、(石を)焼き、(それを布に包んで)人の腰や脚を押したりさすったりするもの

 

『医心方』30巻(33冊)を全訳精解したのは、槇佐知子さんという女性。

菊池寛賞を受賞された小説家ですが、学術研究という分野では在野のかた。

なぜこんな偉業を、一人の女性が成し得たのか?!

槇先生の壮絶な人生は、『医心方の世界 (新装版)古代の健康法をたずねて』をご覧ください。

40年という歳月をかけて槇先生が医心方を翻訳されたことにより

千年の時を越え、今、私たちの前に『医心方』30巻(33冊)の

扉が開いたことに心から感謝いたします。

 

その槇佐知子先生ご本人から、約一年に渡って

寺子屋勉強会で医心方を学ぶ、貴重な機会に恵まれました!!

 40年の来し方を振り返る、槇先生

 「文字通り、寝食を忘れて夢中になりました」

「つくり置きした、おにぎりが夜にはカピカピに割れて」

「でも、このお役目があったから、私は生きて来れた」と。

 

温石 今焼火熨人腰脚者

 温石 今、焼キテ人ノ腰脚ヲ火熨(かうつ)スル者

 温石1 現在、(石を)焼き、(それを布に包んで)人の腰や脚を押したりさすったりするもの。

 

先述の温石の記載ですが、その後に、槇先生の注釈が続きます。

1温石は薬ではなく、軽石や固めた塩、瓦などに塩をまぶして焼き

布や綿などに包んで身体を温めるものをいうが、当時はそれで足腰をマッサージした。

古代の熨法(うつほう)である。

 

 

温石は薬ではなくと、槇先生がわざわざ断りを入れているのは

巻1_Bが薬名考というタイトルで、動植物・鉱物の薬名が記載された巻だからです。

 

医心方 巻1_B 薬名考

本書は他の32冊とは異なり、動植物・鉱物の薬名を新修本草の目録や本草和名などから康頼が取捨し編集したもの。

筑摩書房 『医心方』より

 

医心方には、様々な処方が記載されているのですが、この巻だけは、その素材となる薬名が載っています。

その取捨・編集には、選者 丹波康頼の<思い>が反映されていると言われています。

温石は、薬ではないのです。

それなのに、丹波康頼はわざわざ

「本草外薬七十種」の中で、温石を採り上げています。

 

 

◯ 治療のサポートとしての、温石

◯ 養生のための、温石

~薬ではないけれど~

載せずにはいられない

 

医心方 巻1_B 薬名考の中の<温石>

記載の仕方そのものに、当時の温石の位置付けを見る思いがします。
そして、当代きっての名医、博士、丹波康頼の

患者に寄り添う優しさを感じずにはいられません。

 

宮中医官としてトップに君臨しつつも

からだとこころ全体に寄り添おうとする

丹波康頼の清らかさに、心打たれます。

 

 

温石が、ホットストーンであれば

コールドストーンとしての治療補助の場面は

医心方の本体、〈巻21〉婦人諸病篇の中に、はっきり記載されています。

そして、その文章は、<癒る>の文字で終わっています。

乳房や子宮のポリープ、人には言いづらい多様な症状についての

治療法が網羅された『婦人諸病篇』

筑摩書房 『医心方』より

 

医心方〈巻21〉婦人諸病篇 p47

9⃣ 『龍門方』

 乳が熱を持って腫れたものの治療法

(1)冷たい石でさすれば癒る

 

槇先生の序文のなかでも、「ひどくならないうちに溫熨法冷法を行った。

熱を持って腫れた乳房は冷たい石で冷やす本書には書いていないが

冬季以外は池の中に在る石で冷やしたのである」とあります。

 

「ひどくならないうちに」

そう、このタイミングが大切

  • 池から冷たい石を取り出してきて、冷やす。

___コールドストーン

  • 温かい石を腰脚に押し当ててさする。

___温石(ホットストーン)

 

どちらも、<快>だと思いませんか?

 

からだの自然治癒力を発動させる鍼刺激、処方される様々な生薬。

現代では、西洋医学的な治療、外科手術。

どちらもとても有り難いことだけれど……

 

養生の段階では、ひたすら<快>を心身に伝えることができるという事実に

私たちはもう一度立ち返る必要があるのではと思うのです。

 

人生、<快>の方が良くありませんか?

 

<快>でアプロ―チできる段階で

行き過ぎたアンバランスを戻していきたいもの。

 

現代社会にも、<快>でサポートできる領域

意外に沢山あるのではないかと感じています。

辛いだけが正解ではないと思うのです。

その一つとして、温石があったならと願ってやみません。

 

 

そんなわけで、次回はいきなり<現代>に戻って、11_1から始めます。

巻1_3から巻11_1の間は、室町、江戸と、折に触れて書き足していく予定です。

 

次回の『温石物語』巻11_1をお楽しみに♬