女性の2人に1人は<冷え>に悩んでいると聞くと不思議な気がしませんか?

空調が効いている室内に居て、移動も冷暖房完備の車か電車。

温めグッズや防寒対策の衣類も充実していて、時間のない時でも電子レンジで簡単に温かいものが食べられる今、私たちの<からだ>はなぜこんなに冷えているのでしょう?

 

膀胱炎や月経痛、月経不順、子宮脱。めまいや耳鳴り、むくみに白髪。

のぼせ、肩こり、下痢や不眠など、<冷え>に関係する様々な不調は、私たちに何を伝えようとしているのでしょう?

 

『温石物語』をこうして書き始めた理由は、お一人お一人の冷えの意味が腑に落ちるには、<身体感覚>と結びつけることが大切だと思ったからです。できれば、志しを同じくする人たちと、千年の時空を旅しつつ、いにしえの智慧を分かち合いたいと思っています。

【結論】を先に書いてしまうと

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会陰の温石 (骨盤底を温める、温石)

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そこへ辿り着くための道案内が、『温石物語』なのです。

 

巻1_1,2,3では、いきなり平安時代にタイムスリップします。

枕草子や落窪物語、医心方___今宵は、『枕草子』から始めましょう。

 

千年の昔、平安時代の姫たちは、<冷え>とどう向き合っていたのでしょう。

王朝絵巻に描かれている貴族たちの寝殿造り。

建物をつなぐ長い渡り廊下や、屏風やすだれで仕切られた広い室内に坐しているのは、さぞ寒かろうと思うのです。

 

当時は<火桶>を使っていたようで、朝起きて炭火を焚く様子が『枕草子』にも出てきます。火桶のまわりに女房たちが集まって、手をかざしながら<おしゃべり>している感じは、現代女性にも通じるものがありませんか?

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枕草子 六三 雪の夜

「雪のいと高う降り積もりたる夕暮より、端近う

同じ心なる人、二、三人ばかり、火桶を中に据ゑて物語などするほどに」

気の合った二、三人ばかりで、火桶を囲んでおしゃべりなどするうちに

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姫君や女房たちが手をかざして暖をとっていた、火桶や火鉢

その炭火の中に入れて温めたものが、温石(焼き石)です。

火箸で取り出して、真綿や布にくるんで胸やお腹に当てて使用していました。そのため、当時の温石には、火箸で掻き出すための丸い穴が空いています。

 

この頃の<胸>とは、胃。<胸の病>は胃痛、胃痙攣を指していたそうで、>が腹腔の上部、<>が腹腔の下部とすると、目には見えない<からだ内部>である内臓をいたわることを、解剖生理学がなかった、いにしえの時代から自然と日常的に行っていたことが分かります。


 

現代の私たちはどうでしょう。
冷えは、<外にあるもの>、<手足>など比較的体表近くにあるものと思っていないでしょうか。

これは妄想なのですが、姫君や女房たちの中には、胸やお腹・腰を温石で温めているうちに、骨盤底)を温めるということを密かに思いついた女性もいたのではないかと。
真綿で包んだ温石の上に、ちょこんと坐ってしまえばいいのですから。

あの装束です!中がどうなっているかは、姫のみぞ知るです♬

 

ちなみに、先程の枕草子 六三 雪の夜の続きは、こんな感じ。

気の合った二、三人ばかりで、火桶を囲んでおしゃべりなどするうちに、ふいに男性の来客があって、縁に腰かけながら明け方までおしゃべりをしていくシーン

「女の限りしては、さえも居明かさざらましを、ただなるよりは、をかしう好きたるありさまなど言ひ合はせたり。」

女ばかりでは、そんなふうに夜を明かすまいが、男が一人加わると、ふつうよりおもしろい風流な話題に花が咲く。(現代語訳 枕草紙 稲賀敬二氏 訳 p219)

なんとお茶目で、風雅で、しなやかな時間。

それにしても「室内の私たち(女房たち)」と「縁に腰かける外の男」

……雪の夜です!!平安貴族の殿方も、大変。せめて、温石はお持ちですか?

 

次回、巻1_2.3では、痛みを和らげるものとしての温石について、落窪物語や医心方の記載をご紹介します。

落窪物語では、姫君の恋の行方に、温石が<多大な貢献>をする場面が描かれています。痛快です!!

次回の巻1_2をお楽しみに♬